〜絶版本の宴〜

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スコーリア戦史シリーズ

第一巻のあらすじ
 ネットワーク維持に必要とされるエンパスを王に頂くスコーリア王圏と、不完全な共感能力ゆえに他人の苦痛を最上の快感と認識する「ハイトン士」貴族の支配するユーブ帝国圏は、銀河の覇権をめぐって熾烈な戦いを続けていた。
 そんな中、スコーリア王位継承権者にしてサイボーグ戦士であるソースコニーは、戦闘中にであった青年に心牽かれてゆく。
 しかしその青年は、宿敵ユーブ帝が存在を隠しつづけてきた、世継ぎだったのである…

 以上が第一作の筋書き。
 訳のわからん用語がいきなり出てきますが、これは作中でも全く説明なしに登場してくる語です。
 だいたい「ネットワーク」って何をつなぐものなのか、何でどうコントロールされてるのか、なんで超能力者が必要なのか、そのへんの説明は見事にすっ飛ばされています。要するにこの物語に登場する社会構造その他諸々の要素は、主人公はなにか特別な立場の人なんだよ、と説明するためのガジェットに過ぎません。
 筋書きをもうちょっと、判りやすくしてみましょう。すると以下のようになります。

第一巻のあらすじ
その時代、銀河の覇権をめぐって対立する二つの国家があった。
一つは、国体維持のために「ネットワーク」を保持し、その保持に必要不可欠とされるエンパス(共感能力者)と呼ばれる超能力者を王に抱くスコーリア王圏。
もう一方は、「ハイトン士」と呼ばれる超能力貴族達が支配するユーブ帝国圏。このハイトン士もまたエンパスであったが、完全な能力は持っておらず、かつその能力を己の快楽追求のために使っていた。この快楽とはすなわち、他人に苦痛を与え、その苦痛を「共感」するというもの。
快楽の追求に余念の無い「ハイトン士」貴族の支配するユーブ帝国圏は、銀河の覇権をめぐってスコーリア王圏と熾烈な戦いを続けていた。

 そんな中、スコーリア王位継承権者にしてサイボーグ戦士であるソースコニー(もちろんエンパス)は、戦闘中に出会ったある青年に心牽かれてゆく。
 しかしその青年こそ、宿敵ユーブ帝が存在を隠しつづけてきた、世継ぎだったのである…

……つまりあれですな、「なんか知らんが善なる能力を持つ王に支配された国」の王女様が、「支配階級が全員サディストで、しょーもない能力を持ちやがっている、ダメダメ帝国」の皇子様に惚れ(しかも戦闘中に!)、無事駆け落ちするまでの恋愛物語です(少なくとも第一巻は)。

 後書きでもちょっと触れられていますが、つまりストーリーの骨子はほとんどロミオとジュリエット
ただしこのジュリエット、かなりトウが立っている上に戦闘力ありまくり。なにやらハーレクィン・ロマンスの女主人公の武装強化版といった感があります。
対するロミオ君の方はと言えば、ひじょーに軟弱なボーヤです。四半世紀以上前の少女マンガでお目にかかることのある「弱弱しくて」「決断力が無くて」「うじうじ悩むのだけが得意な」「薄幸の」少女主人公、あれの男性版だと思えば丁度よろしいでしょう。鬱陶しさもあのくらいです。

ジュリエットの年齢が年齢なのでストーリーに救いが出ているような気はしますが、キャラクターに自称させている政治的立場と年齢から考えると……ちょっと無理(というか、かなり無理)のあるストーリー展開ですよ。
ソースコニーのキャラクターにも無理があります。単なる宇宙軍将校ならとにかく(それでも「戦闘中に誰かに惚れる」は無理ありすぎですが)、王族という設定が実に実に薄っペラく感じられる言動の山です。
話の流れの中で旨く誤魔化されていますが、二人の出会いに至る設定にも無理があります。作者が思いついたアイディアを全部突っ込んで、力技で一つの話にまとめ上げてみたが、微妙に破綻しているものが見え隠れしているといったところでしょうか。
まとめ上げた技量には見るべきものがあるかもしれませんが、それだけです。

ギミック自体も目新しいものはありません。
ユーブ帝圏の貴族「ハイトン士」に至っては、スペースオペラ古典たる「レンズマン・シリーズ」に登場するデルゴン貴族そのままですしねえ。
自分たち以外の種族を見下し、拷問にかけてその苦痛を味わうなんてひどい連中だ!という表現自体、とうの昔に陳腐化しております。
読みたければ暇つぶしにどうぞ、というところですね。

HAKU >ロミオ君の人物像、中世騎士物語に出てくるお姫様もかくやと言うくらいありきたり……って、これ旧版でも書いた通りだね。
NAKA >ジュリエットとバランスは取れているね。どっちも薄っペラい。
HAKU >で、続編は読んだの?
NAKA >誰か読んでみてくれ、私は嫌だ。

この作品の登場するバカいち(と嫌展)


書籍データ
作者キャサリン・アサロ
発行早川書房(ハヤカワ文庫SF)
発行年1999年
ジャンルSF
全タイトル
  1. 飛翔せよ、閃光の虚空へ!
  2. 稲妻よ、聖なる星をめざせ!
  3. 制覇せよ、光輝の海を!(上)(下)
  4. 目覚めよ、女王戦士の翼!(上)(下)

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