玉座を追われた王ウォル・グリークと、天から落ちてきて王の友となった美少女リィが、絶対不利な状況から王位奪還を実現するまでの物語。これが4巻まで。
この4巻までは敵がしっかりと書かれていますので、お勧めに入れても良いかと思われます。
ここまでに登場した敵方にはそれなりの倫理があり、単なる「強くて正しい僕らの主人公、悪い奴らをぶっ飛ばせ」ストーリーに留まらないので、ちょっと期待したんですけどねえ……
4巻以降は王に返り咲いたウォルと周辺諸国のゴタゴタが描かれ、ついでに王宮内の日常的な事件が物語に色を添えていますが、敵の姿が弱くなり、どうも子供向け「強いお姫様、暴れて敵をぶっちめる。カッコいい!」ストーリーに陥りがちかなという気がします。
救いは脇役がそれなりに描かれていて、サイドストーリーに幾ばくかの救いがあるということでしょうか。主人公サイドの主要脇役が、みな主人公の絶対的な味方として描かれているのはちょっと不満な点もありますが、これはこんなもんだろうと割り切れる範囲かと思われます
しかしなんといっても、問題は17・18巻です。
……いきなり脱線してSF風ファンタジーになってしまうため、ついていけないものを感じる人も多いのではないでしょうか。あるいは最初からもうちょっと、リィに関する情報を小出しにしていけば、すんなりと読める流れになったろうと思われるのが惜しいところです。
この最終巻まで含めて考える場合、作者のノリだけで暴走することもある同人小説だと割り切って読むのであれば、出来のいい部類に入るでしょう。
それからこれは全くの余談ですが、読んでみたいが新書版は表紙やイラストの絵がどうも子供っぽくて……という方もいらっしゃると思われます。この場合、文庫版の装丁は無難な仕上がりですから、文庫をお勧めしておきます。
NAKA >さらに余談ですが、この物語中に「ファロット一族」なる暗殺一族が登場します。Fallotから取ったのかもしれませんが、その場合、これはファローと読むんですよね……
HAKU >「ファロー四徴症」のファローね。そういえばカヤタソ、微妙に医学用語の使用数多いかも。
NAKA >まあこのへんは本当に枝葉末節に過ぎませんし、どうでもいい話です。
作者 | 茅田砂胡 |
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発行 | 中央公論社 |
発行年 | 1993 |
ジャンル | ファンタジー |
全タイトル | |
入手可能性 | 書店で入手可能。 |